佐藤建築事務所

更生保護法人備作恵済会 古松園

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FURUMATSUEN

更生保護法人備作恵済会 古松園

  • 佐藤建築事務所「更生保護法人備作恵済会 古松園」

    市街地の中にある更生保護施設である。更生保護の目的は、刑務所を出所、もしくは仮出獄してきた人達を一定期間、保護し、社会復帰を助けることにある。従って2~3ヶ月の間、食・住の提供、日常生活全般に亙る相談に応じ、自助努力を高め、在園中に働いて得た賃金を自立資金に充てるよう促している。刑を終えた人達が社会に職を獲得し、健全な社会人として暮らせるよう援助することを使命とする。

    市街地の中にある更生保護施設である。更生保護の目的は、刑務所を出所、もしくは仮出獄してきた人達を一定期間、保護し、社会復帰を助けることにある。従って2~3ヶ月の間、食・住の提供、日常生活全般に亙る相談に応じ、自助努力を高め、在園中に働いて得た賃金を自立資金に充てるよう促している。刑を終えた人達が社会に職を獲得し、健全な社会人として暮らせるよう援助することを使命とする。

  • 佐藤建築事務所「更生保護法人備作恵済会 古松園」

    この様な社会制度は、再犯防止という狙いはあるものの、受刑者に対する、或いは人間と社会との関係に対する最も肯定的な眼差しをその背後に抱くものであり、地域のボランティアとしての民間の保護司が下支えしている状況とも相俟って、人間の形作るインスティテューションの中でも極めて浪漫的な意味合いを持つものとなっている。
    従って、建築のあるべき姿は、形や表現としても、上記のような制度上のあり方が体現されるべきものであろう。園生にとっては一時の仮の住居であるにしても、単に収容所のような発想のものではなく、社会との接点の中で「開かれてある」存在でなければならない。しかし乍ら、保護観察の内容が「遵守事項」を前提とした指導監督にある以上、園生の生活が一定限度の監視下の処遇を受けるのもまた当然のことであり、その生活の様態は、外部に対して基本的には閉じられ囲嬈された状態が求められるのも事実である。よって建築の構成は、このような「閉じられた部分」と「開かれた部分」を場所ごとの性格に応じて、意識的に組織していくことに主題をおくことになる。

    この様な社会制度は、再犯防止という狙いはあるものの、受刑者に対する、或いは人間と社会との関係に対する最も肯定的な眼差しをその背後に抱くものであり、地域のボランティアとしての民間の保護司が下支えしている状況とも相俟って、人間の形作るインスティテューションの中でも極めて浪漫的な意味合いを持つものとなっている。
    従って、建築のあるべき姿は、形や表現としても、上記のような制度上のあり方が体現されるべきものであろう。園生にとっては一時の仮の住居であるにしても、単に収容所のような発想のものではなく、社会との接点の中で「開かれてある」存在でなければならない。しかし乍ら、保護観察の内容が「遵守事項」を前提とした指導監督にある以上、園生の生活が一定限度の監視下の処遇を受けるのもまた当然のことであり、その生活の様態は、外部に対して基本的には閉じられ囲嬈された状態が求められるのも事実である。よって建築の構成は、このような「閉じられた部分」と「開かれた部分」を場所ごとの性格に応じて、意識的に組織していくことに主題をおくことになる。

  • 佐藤建築事務所「更生保護法人備作恵済会 古松園」

    1階の食堂は、一旦、囲われ、閉じられた中庭のなかで、意識が外部に拓かれる領域となるよう設けられたものであり、園生の専用玄関脇、2階の談話コーナーの屋上庭園越しの自立壁などは、外部世界との関係に1つのクッションをおく閾として考えられている。個室の南面にカウンターとして配された家具(バルコニーを設けていない)配置しているが、このことにも同様の意味合いを附与することができる。

    1階の食堂は、一旦、囲われ、閉じられた中庭のなかで、意識が外部に拓かれる領域となるよう設けられたものであり、園生の専用玄関脇、2階の談話コーナーの屋上庭園越しの自立壁などは、外部世界との関係に1つのクッションをおく閾として考えられている。個室の南面にカウンターとして配された家具(バルコニーを設けていない)配置しているが、このことにも同様の意味合いを附与することができる。

  • 佐藤建築事務所「更生保護法人備作恵済会 古松園」

    園生の生活を支えるゾーンはこの様に閉じられた中で開かれるわけで、2階の集会室の如くに、社会との交流を促進する室にあっては、外に向かって積極的に開放された場となるよう考えられている。
    こうした開けと閉じの抑揚-そのことが含意する両義性が本当の意味でこの施設が「開かれてある」ことの内実であり、建築のデザインを大きく決定する。
    また、園生の生活動線が、他のゾーン―事務管理ゾーン、職員住宅ゾーン、地域住民利用ゾーン―とどの様な関係を持つかに微妙な計画上の配慮が要請されている。

    園生の生活を支えるゾーンはこの様に閉じられた中で開かれるわけで、2階の集会室の如くに、社会との交流を促進する室にあっては、外に向かって積極的に開放された場となるよう考えられている。
    こうした開けと閉じの抑揚-そのことが含意する両義性が本当の意味でこの施設が「開かれてある」ことの内実であり、建築のデザインを大きく決定する。
    また、園生の生活動線が、他のゾーン―事務管理ゾーン、職員住宅ゾーン、地域住民利用ゾーン―とどの様な関係を持つかに微妙な計画上の配慮が要請されている。

  • 佐藤建築事務所「更生保護法人備作恵済会 古松園」

    古松園の設計をふり返ってみて、人間にとって公的なるものとは何か、我々は何故共同で生かされているのか、人間の形作る制度とは何か、その中にあって、我々は何を感じとり、何を為すべきなのだう―この永遠とも云える問いかけを改めて考える機会を与えられたように思う。
    しかし考えてみると、我々が生きる根拠がそこにあり、建築の感動もその中にあるに違いない。建設の過程は決して安逸なものではなかったが、出来上がった建物の表情はとても柔らかく、或る種の清潔感とすがすがしさを醸し出すものとなっている。地域に対して開かれた存在として、施設が本来の目的を達し、風雪の中で成長してゆくことを心から願う。

    用途/更生保護施設 構造・規模/鉄筋コンクリート造・地上3階建 建築面積/469.61㎡ 延床面積/1,064.54㎡ 岡山市北区鹿田 1999 1999 岡山市まちづくり賞

    古松園の設計をふり返ってみて、人間にとって公的なるものとは何か、我々は何故共同で生かされているのか、人間の形作る制度とは何か、その中にあって、我々は何を感じとり、何を為すべきなのだう―この永遠とも云える問いかけを改めて考える機会を与えられたように思う。
    しかし考えてみると、我々が生きる根拠がそこにあり、建築の感動もその中にあるに違いない。建設の過程は決して安逸なものではなかったが、出来上がった建物の表情はとても柔らかく、或る種の清潔感とすがすがしさを醸し出すものとなっている。地域に対して開かれた存在として、施設が本来の目的を達し、風雪の中で成長してゆくことを心から願う。

    用途/更生保護施設 構造・規模/鉄筋コンクリート造・地上3階建 建築面積/469.61㎡ 延床面積/1,064.54㎡ 岡山市北区鹿田 1999 1999 岡山市まちづくり賞

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